QOL向上のために歯科医療にできること:MI21.net

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推薦の言葉

鶴見大学 歯学部探索歯学講座 教授 花田信弘

 百歳長寿者は1965年には全国でわずか198人しかいませんでした。その後、1998年には1万人を超え、5年後の2003年には2万人を超えました。2007年の9月末には3万人を超えています(3万2295人)1)。人々が医療支援を受け、健康の知識を得て、それを実践する環境があれば、百歳長寿者はますます増加すると思われます。命の長さと歯の命の長さのギャップが広がらないように私たちは、歯科の専門家として人生100年間もの長い間、歯を失わないためにはどうしたら良いのかを考えました。それは難しいことですが大切なことです。

 歯の健康は全身の健康とも関連しています。必ずしもう蝕と歯周病だけを対象にしているわけではありません。口腔の病原細菌は、呼吸器や循環器を始め、全身の臓器に伝播し、慢性炎症を引き起こすので、歯科以外の診療科でも注意が必要です。また、逆に全身の疾患は歯の健康に影響を与えています。

 近代医学は、なぜ病気になるのかを分析し、病気の原因を発見して発症との因果関係を合理的に説明することから始まりました。これを疾病生成論といいます。疾病生成論は重要ですが、高齢社会はこれだけでは不十分です。人々が生きる目的、栄養、運動、休養など元気になる因子を分析し、それを強化する必要があります。これが健康生成論です。歯の健康は、歯磨きによるバイオフィルムの除去や細菌毒素(LPS)の抑制を主な手法に用いますから、もともとは疾病生成論に基づく保健医療です。しかし、歯の健康は、食べる、しゃべる機能を通して、人間存在の本質である言語活動と食文化を担っています。また健康で美しい歯は、仲間づくりに必要なスマイルラインの維持につながります。従って、人々のQOLや文化を支える歯の健康は全身の健康を維持増進する健康生成論にとって重要な課題です。

 本書はそのような考え方に基づき、歯と全身の健康を維持するための基本的な指針になることを目指して、学術的な背景(EBM)とMIのコンセプトをもとに株式会社ジーシーのスタッフが多くの図を駆使して解説したものです。

 読者の皆様は本書を活用し、日々の診療を通してこれからも発展していくMIに取り組んでいただきたいと思います。

文献:
1)厚生労働省老健局計画課、平成19年 百歳以上高齢者等について、
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/09/dl/h0914-3a.pdf(平成20年3月10日アクセス)

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