2006年4月、改正介護保険法の施行により、介護予防事業として『新予防給付』及び『地域支援事業』のサービスがスタートしました。2000年より施行された従来の介護保険制度のサービスは重度要介護者に偏っていましたが,改正によりほとんど全ての高齢者を対象とした予防重視型の制度へ転換したといえます。
近年、要支援者・軽度要介護者の増加は著しく、その主な原因は高齢による衰弱や転倒・骨折などの老年症候群といわれています。その老年症候群は心身の機能を使わないことでさらに悪化してしまうことがわかっており、『新予防給付』では、要介護状態の改善や重度化の予防を目的(三次予防)とし、「運動器の機能向上」「栄養改善」「口腔機能の向上」の3つのサービスを個人のケアプランに応じ提供することとなりました。
また『地域支援事業』は、一般の高齢者を対象とした「一般高齢者施策」と要支援・要介護に陥るリスクの高いと思われる高齢者を対象とした「特定高齢者施策」に分けられます。
「一般高齢者施策」では、生活機能維持・向上の啓発を目的(一次予防)とした講演会などの健康教育事業、「特定高齢者施策」では、生活機能低下の早期発見・早期対応を目的(二次予防)として「運動器の機能向上」「栄養改善」「口腔機能の向上」の3つのサービスに加え、「閉じこもり」「認知症」「うつ」の予防・支援の合計6つのサービスを個人のケアプランに応じて提供しています。
高齢者がおいしく楽しく安全な食生活を営むことは、栄養改善や筋力の向上を通じた転倒防止や閉じこもりなどの予防だけでなく、気道感染や認知症、循環器疾患などの予防につながるとされ、介護予防や介護の重度化予防に有効とされています。
「口腔機能の向上」の専門的サービスは、歯科衛生士や言語聴覚士、看護職員が中心的役割を担い、月に1〜2回程度実施します。サービス内容は「摂食嚥下訓練」「歯科保健教育」「口腔清掃の指導」などで、具体的には高齢者の口腔状態や改善目標などを把握するためのRSST(反復唾液嚥下テスト)やオーラル・ディアドコキネシス(口腔器官の巧緻性・運動速度評価)、咬合テスト等の事前評価、個々にあわせたプログラムの実施、モニタリング、事後評価などを行っています。
また高齢者が歯科治療を必要とする場合、歯科衛生士等は主治医や従事している歯科医院や地域の歯科医師等と連携をとりながら介護予防サービス計画を立案し実施するとされており、地域と歯科との緊密な連携が求められています。