QOL向上のために歯科医療にできること:MI21.net

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口腔の2大疾患 歯周病

う蝕と並ぶ2大疾患といえば歯周病でしょう。
広義には歯髄炎等に由来する根尖性歯周炎や咬合性外傷なども含まれますが、ここでは一般に歯周組織の炎症性病変を表わすいわゆる『歯周病』について考えてみましょう。

歯肉炎と歯周炎

歯肉炎と歯周炎

プラーク中の細菌が歯肉に接触すると細菌の出す毒性物質が組織に浸潤し、細菌に対する抗体とともに白血球(多形核白血球、リンパ球、好中球など)が引き寄せられ、細菌が根尖側に侵入するのを防ごうとします。それが最初の免疫応答、歯肉の炎症の始まりであり、その結果、歯肉炎となります。
この時点では歯周病への感受性がよほど高くない限り、適切なクリーニングと管理により炎症は収まります。しかし、最新の情報では歯肉炎も慢性化すると歯周組織内の結合組織がみえないところで炎症により破壊され、いったん治癒したようにみえても、歯周組織内では歯肉繊維が破壊され脆弱化しているため、その後の歯周炎発症・進行のリスクが高いことが示唆されています。
そして歯周病への感受性が高かったり、この時点で適切なクリーニングも行なわれず不衛生な状態が続くと、細菌や細菌の出す毒性物質は歯根に沿って根尖側及び側方に浸潤し、歯周組織を破壊していき歯周炎へと進行していきます。
また歯周病原細菌は自らの出す毒性物質による直接的、そして歯周組織の免疫性を誘導し活性化することでの間接的な組織破壊を呼び起こします。最初の免疫応答で活躍した白血球の出すさまざまな酵素は、細菌のみならず歯周組織の損傷も引き起こします。したがってそのまま放置されると歯周病原細菌は毒性物質を産生し続け、組織はこれらの物質に対する無益な応答を続けた結果、ポケットはさらに深くなり、細菌は増殖しコラーゲンや結合組織、歯槽骨の破壊を引き起こします。
その後、抗体や貪食作用などにより歯周病原細菌が感染局所から排除されると歯周炎は一時緩解しますが、再度細菌の繁殖が起こると歯周炎は再発します。免疫応答が消失したあと、細菌の再繁殖を許すと炎症反応が繰り返され歯周炎が慢性化することになります。

※鴨井久一, 花田信弘, 佐藤勉, 野村義明編:Priventive Periodontology; 医歯薬出版, 東京,2007

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