口腔が全身の健康に及ぼす影響については、図「口腔が健康状態に及ぼす影響」でまとめられているように、近年さまざまな角度から研究がされています。
健康全般における歯科、すなわち口腔の健康の位置づけも明確になってきました。
口腔の2大疾患と言われる、『う蝕』そして『歯周病』も、最終的な転帰は歯の喪失であり、実際に歯の喪失原因の大半を占めています。
多くの研究から、歯の喪失が一定のラインを超えると咀嚼能力の低下がみられることがわかっており、それが80歳で20本の歯を残そうという8020 運動の論拠にもなっています。すなわち、残存歯数が20本を下回ると、食品を噛むことが不自由に感じる人が増え、またそのことにより軟食傾向など食品の選択行動の変化による生活習慣病やその要因とも言われる内臓脂肪症候群(メタボリック シンドローム)を招いたり、栄養の偏りや食欲の低下による低栄養を招きます。特に低栄養は、長く続くと筋量の維持に必要なタンパク質などの摂取が不充分になり筋力の低下、そして運動能力の低下などを招き、身体的自立が損なわれる要因としても非常に重視されています。その他にも、咀嚼機能が視覚や聴覚、あるいは脳機能(学習記憶能力、認知症等)にも影響を与えるとされており、『咀嚼』という機能を維持すること、機能歯を維持すること、すなわち歯の喪失を防止し全身の健康をも維持することにもつながることがさまざまな研究によって明らかにされてきています。
※財団法人8020 推進財団:永久歯の抜歯原因調査報告書;2005.3
※吉武裕:高齢者の体力と口や歯の関係, 口腔と全身の健康との関係II; 財団法人8020 推進財団,東京
口腔内細菌の全身への影響
※Iwai T, et al.:Oral bacteria in the occluded arteries of patients with Buerger disease; J Vasc Surg.42, 107-15,2005
※鴨井久一, 花田信弘, 佐藤勉, 野村義明編:Priventive Periodontology; 医歯薬出版, 東京,2007