さまざまな問題を起こすバイオフィルムですが、細菌の初期付着から、バイオフィルムによって問題が起こるまでの間に考えられる予防的介入の手段を下記に示しました。
どれもわかりきったことのようですが、改めて意識することで、『治療』に至るまでの『予防』の大切さを認識できるのではないでしょうか。
上記の図の中 に1次予防、2次予防といった言葉が出てきましたが、これは、Leavell & Clark(1953)の考え方に基づくもので、ここでいう「予防」とは狭義の「予防(疾病発生の阻止)」だけをいうのではなく、健康と疾病状態の流れのなかで疾病の全過程にわたって実施されるものと捉えています。すなわち疾病の発症前から発症後まで全ての段階で、それ以上悪化(進行)させるのを予防するという概念です。
発症前の予防段階(疾病の発症予防:狭義の予防)を『第1次予防』、発症後の治療の段階(疾病の進行を阻止して機能障害を予防)を『第2次予防』、そして機能障害を起こす段階まで疾病が進行してしまった場合の段階(完全な機能不全からの予防)を『第3次予防』として3相に予防活動を分け、さらにその手段を5つの段階に分けています。
この考え方は公衆衛生的な分野では広く知られており、歯科でも国内外問わずさまざまな研究者により各段階を口腔保健分野に当てはめて活用しています。
予防手段の5段階 | 疾病のレベル | 対 策 | |
第1次 予防 |
健康増進 | 健康教育、発育期の良好な栄養、人格の適正な発育、快適な住居とレクリエーション、労働条件、結婚相談と性教育、優性保護、定期健康診査と健康相談 | |
特異的予防 | 予防接種、個人衛生管理、環境浄化、労働安全と災害防止、特異的栄養、発がん予防とアレルゲン対策 | ||
第2次 予防 |
早期診断・即時処置 | 伝染性疾患の蔓延の防止、継発症、余病の発生を防ぐ機能不全の拡大、延長を防ぐスクリーニングのための臨床検査の実施 | |
障害の進行阻止 | 適正治療、機能喪失の制限、死を予防する設備の拡充疾病の進行状況を最小限にとどめ、病期を短縮して後遺症や死から予防する | ||
第3次 予防 |
機能回復 | 残余能力の最大利用のための再教育施設復帰者の環境教育、完全雇用、庇護施設の整備、労働治療 |
※Leavell HR,Clark EG:Preventive medicine for the doctor in his community(3rd ed.);McGraw-Hill,NewYork,1965
注:研究者によっては『障害の進行阻止』を第3次予防に入れているものもありますが、ここでは、Leavell&Clark の分類にあわせた分類にしました。