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ハイドロキシアパタイト | 歯の主な構成成分でカルシウム(Ca)とリン(P)からなる結晶体である。この結晶が安定して大きいほど硬く、う蝕などに対して抵抗性が強い。組成はCa10(PO4)6(OH)2であるが、結晶表面に位置しているアルカリ基(OH-)がフッ素(F)と置換した、フルオロアパタイトCa10(PO4)6F2は、より結晶性が高くう蝕にも抵抗性が高い。 関連→フルオロアパタイト、カルシウムイオン、リン酸イオン |
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病原性バイオフィルム | バイオフィルムとは固体表面に付着した細菌やその産生物からなる複合体のことをいい、プラークはバイオフィルムの代表的なものである。なかでも、細菌を凝集・停滞させ、抗菌物質などにも抵抗性を示す病原性の高いものを特に病原性バイオフィルム(う蝕原性プラーク)と呼んでいる。う蝕も歯周病のこのバイオフィルムによる感染症であると言われている。 関連→プラーク、 |
表層下脱灰病変 | プラーク中の細菌が産生する酸が長期間にわたり作用した結果、最初に形成される病変で、う蝕の初期病変であるといえる。臨床的にはエナメル白斑として診断される。しかし、この時点では、う窩は認められず、フッ化物の応用やプラークコントロールなど適切な処置により再石灰化が可能な状態である。 同→エナメル白斑 関連→う窩、う蝕、再石灰化 |
フィッシャーシーラント | 小窩裂溝填塞、予防填塞ともいい、う蝕好発部位である小窩裂溝をグラスイオノマーセメントやコンポジットレジンなどを用いて予防的にふさぐ処置をいう。特に萌出直後はう蝕になりやすいため、歯質が成熟し咬合が確立するまでの間、小窩裂溝を口腔環境から遮断し、保護するプロテクターとしての重要な役割を果たす。 |
フッ化第一スズ | う蝕予防剤の一つであり、溶液に含まれるフッ化物イオン(F-)の歯質強化及びプラーク抑制効果に加え、スズイオン(Sn2+)にはさらに高いプラーク抑制効果が期待できるため、除菌治療(3DS)の有効なツールとして注目されている。また、う蝕抑制効果は、フッ化ナトリウムなどに比べ有意に高いことがさまざまな研究により明らかになっている。歯面塗布剤としては、8%水溶液が用いられるが、水溶液中での安定が難しく調合してから1時間以内の使用が薦められる。歯磨剤としては、0.4%配合ゲルが市販されており、フッ化スズは、グリセリン溶液では安定するため溶剤にグリセリンを使用しているものが多い。 関連→フッ化物、フッ化ナトリウム、3DS、プロスペック |
フッ化ナトリウム | う蝕予防剤の一つで、歯面塗布剤、洗口剤、歯磨剤などさまざまな用途で最も多く使用されている。通常、歯面塗布には、2%水溶液、洗口剤としては0.5〜1%水溶液、歯磨剤には0.2%配合のものが市販されている(日本ではフッ素濃度1,000ppmまでと定められている。0.2%フッ化ナトリウムの場合900ppm)。また、フッ化ナトリウムは、歯質中のリン酸基を解離する性質があるため、正リン酸を加えてう蝕予防効果を高めたものがリン酸酸性フッ化ナトリウム溶液(APF)である。 関連→フッ化物、フッ化第一スズ、プロスペック |
フッ化物 | 自然界に広く分布し、フッ素単体で存在することはほとんどなく、フッ化物として存在している。フッ化物のう蝕予防効果は、斑状歯の疫学調査によって明らかとなった。その後の研究で、さまざまな応用法が考案、実施されその効果が立証されている。予防機序としては、大きく大別して歯に対する作用と細菌に対する作用に分けられ、歯に対しては、ハイドロキシアパタイトCa10(PO4)6(OH)2の結晶表面に位置しているアルカリ基(OH-)がフッ素(F-)と置換した、耐酸性の高いフルオロアパタイトCa10(PO4)6F2を形成すること、再石灰化の促進作用、また歯の石灰化時期に作用すると結晶化の高い歯質が形成されるなどの効果がある。細菌に対しては、細菌の産生する酵素の活性を阻害するため、発育や酸産生を抑制するなどの効果がある。 関連→ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、ATPアーゼ、エノラーゼ |
不溶性グルカン | 菌体外多糖体の一つ。歯面に初期に付着するレンサ球菌類は、糖質からグルカンやフルクタンといった多糖体を合成し、平滑な歯面への付着を可能にする。特にミュータンスレンサ球菌がショ糖からグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)により合成される粘着性の不溶性グルカンは、細菌を凝集・停滞させ、また不溶性のため唾液から細菌を守るバリアー効果に加え、細菌から産生された酸を停滞させる。そのことからミュータンスレンサ球菌のう蝕病原性はこの不溶性グルカンの合成能によって決定づけられるといえる。その他いくつかの細菌にもグルコシルトランスフェラーゼやフルクトシルトランスフェラーゼ(FTF)を産生し、多糖体を合成し弱い付着が可能なものはあるが、それらには、ミュータンスレンサ球菌のような粘着性で不溶性の多糖体を合成することはできない。 関連→ミュータンスレンサ球菌、病原性バイオフィルム |
プラーク | 歯の表面に付着した細菌をおもな構成成分とする堆積物であり、プラーク1mgあたり2.5×108個もの細菌が存在するといわれている。プラーク中の細菌は経日的に変化しており、ミュータンスレンサ球菌が関与する前の初期プラークは、歯質に対する付着力が弱いため、う蝕や歯周病に対する病原性は比較的低いとされている。 |
ブラッシング | 歯みがきのこと。口腔内の清掃には、家庭で行なうブラッシングと歯科診療室で行なう専門的な清掃PTC(Professional Teeth Cleaning)がある。う蝕予防に関して、日常的な清掃であるブラッシングは特に重要である。歯ブラシを中心に歯間ブラシなどの補助用具も活用し、毎食後ブラッシングを行なうことが望ましい。しかし、日常のブラッシングだけでは困難な汚れや部位などは専門的な清掃(PTC)が必要なため、定期的に通院することが肝要である。 関連→PTC、プロスペック |
フルオロアパタイト | ハイドロキシアパタイトとよく似た結晶構造をもつが、フルオロアパタイトの方がより安定した結晶であることが知られており、特に高いう蝕抵抗性を示す。フルオロアパタイトは構造式Ca10(PO4)6F2で表わされ、ハイドロキシアパタイトCa10(PO4)6(OH)2のアルカリ基(OH-)がフッ素(F-)と置換した形になり、安定性の違いは、そのアルカリ基とフッ素イオンの構造上の位置の違いによって説明される。フッ化物とハイドロキシアパタイトの反応はフッ素濃度によって異なり、高濃度の場合(歯面塗布剤など)は、歯面にはまずフッ化カルシウム(CaF2)が生成され、そのフッ化カルシウムから溶出したフッ化物イオンとハイドロキシアパタイトが反応してフルオロアパタイトを生成する。 関連→ハイドロキシアパタイト、フッ化物 |
プロスペック | PROSPEC。Professional Specificationを略した造語。ジーシーのオーラルケア用品のブランド名。 歯科医や歯科衛生士が患者さんにブラッシングを指導するための用具として開発された歯科医院専用製品の草分け的存在。 1982年に発売。その後改良・形態追加等を繰り返し現在では歯ブラシ・歯間ブラシ・デンタルフロス・歯垢染色液・歯磨剤他ラインナップも充実している。その品質の高さは歯科医・歯科衛生士だけでなくご使用になった患者さんにも認められている。 プロスペック製品は歯科医院専用製品であるため、薬局やスーパーで購入することはできない。歯科医院でのみ購入できる、まさにプロスペック(プロ仕様)な製品である。 関連→ジーシー、GC |
プロフェッショナルケア | 専門家による予防的処置をいい、PTC(専門家によるクリーニング)や3DS(フッ化物塗布及び除菌処置)、フィッシャーシーラント(小窩裂溝填塞)などがある。家庭で行なうホームケアとあわせて行なうことがより効果的である。 関連→予防、ホームケア、PTC、3DS、フィッシャーシーラント |
ペリクル | 獲得被膜ともいう。歯質表面に直接接触して形成される1〜10μmの唾液由来のタンパク性被膜であり、原則として無細胞、無細菌、無定形であるといわれている。唾液中の糖タンパク(ムチンなど)が静電気的にハイドロキシアパタイトに吸着する結果形成されるもので、歯質の保護作用、及び初期脱灰で生じたカルシウムやリン酸イオンの拡散を防ぎ、再石灰化の促進作用などがある反面、細菌の初期付着の足がかりともなる。 日常的なブラッシングでは除去することはできないが、研磨剤を用いた器械的清掃(PTC)によって除去することができる。ペリクルを除去したエナメル質を唾液に接触させると、およそ60分ほどでペリクルが形成されるといわれている。 関連→唾液、糖タンパク、プラーク、歯垢 |
ホームケア | 家庭で日常的に行なう予防的処置をいい、ブラッシングやフッ化物応用、食生活の改善などが含まれる。プロフェッショナルケアとあわせて行なうことがより効果的である。 関連→予防、プロフェッショナルケア、ブラッシング、フッ化物、プロスペック、食生活 |