QOL向上のために歯科医療にできること:MI21.net

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平均寿命・健康寿命とQOL

日本が世界で1、2を誇る『平均寿命』の長い国であることは周知のことだと思いますが、この平均寿命という指標は、0歳時からの平均余命をいい、「あと何年生きられるか」という生存の量のみを問題とする考え方でした。
しかし近年では生存の量だけではなく、「いかに自立して健康で暮らせるか」というQOLを考慮した『健康寿命』という考え方が急速に広まり、2000年、WHOでは加盟国の『健康寿命』を算出し公表しました。
World Health Report 2004(2002データ)に公表されたものでは、日本は平均寿命のみならず、健康寿命でも世界一( 男性72.3歳:女性77.7歳)、また、平均寿命に占める障害を有する期間も世界で男女平均値では一番短い(男性7.8%世界2位:女性8.8%世界1位)健康な国であることが立証されています。

一方で国民の健康に対する不安感は大きく、健康・体力づくり事業財団が行なった国民の意識調査によれば約8割の人が健康に不安を感じており、そのうちの2割の人が歯の健康に不安を抱いています。

国民の健康に対する不安感

国民の健康に対する不安感

さらに最近では、『健康幸福寿命』という言葉も耳にするようになりました。
自立して暮らせるという肉体的な健康によるQOL だけでなく、精神的にも社会的にも、また文化的、経済的…
さまざまな側面から健全であることこそQOL の向上につながるのだと思われます。
そして、「何でもおいしく食べられる」という非常に身近な幸福は、健康な口腔があってこそ実現できることだといえるでしょう。

※Healthy life expectancy in all WHO member states,estimates for 2002:World Health Report2004;WHO,2004
※健康づくりに対する意識調査:( 財) 健康・体力づくり事業財団;1996

QOL(Quality Of Life)とは

Health Promotion Glossary

『QOL(Quality Of Life)』とは、“生活の質”や“生命の質”“人生の質”などとも訳され、主観的・客観的にもまた身体面・精神面・社会面からも人間のよりよい状態のことを意味しています。医療におけるQOLの最終目標は、患者さんの生命と質の維持と向上にあります。
この概念は、WHO が1946 年に提唱した【健康の定義】を発展させた考え方であり、健康を考える上では外すことのできない重要な概念であると言えるでしょう。1998 年にWHO の発行した『Health Promotion Glossary』(ヘルスプロモーション用語集)では下記のように解説されています。

『Quality Of Life とは、個人個人の生活状態の認識のことをいい、生活している文化や価値観、それぞれの目標や期待、規範や関心事とも関連しています。これは非常に広い概念であり、身体の健康や心理的側面、自立の程度や社会的関係、さらに個人の信条など環境面での顕著な特徴などとの関係が複雑に組み込まれた変動的なものです』

※The WHO QOL Group;What Quality of Life? : In World Health Forum,Vol.17,354-356 ,Geneva,1996

この定義において注目すべきは、Quality Of Life とは主観的判断に左右されるとしたことです。WHO は、どの文化においてもあてはまるQuality Of Life の概念の根幹をなす部分を6つに分類しました。
  1. 身体面(例:体力、疲労など)
  2. 心理面(例:前向きな感情など)
  3. 自立の程度(例:日常活動能力)
  4. 社会的関係(例:現実的な社会支援)
  5. 個人の信条や精神面(例:人生の意義)
  6. 環境面(例:ヘルスケアへのアクセスしやすさ)
『健康』と『Quality Of Life』は、こういった面でそれぞれ補完・重複する関係にあります。Quality Of Life は、社会的、経済的状況に関わりなく、個人のニーズが満たされているか、幸福や満足感を達成する機会が否定されていないかという個人の認識を反映しています。Quality Of Life の向上という目標は、避けられる不健康状態の予防とともに、ヘルスプロモーションにおいてさらに重要なものになってきています。

※World Health Organization; Health Promotion Glossary: 1998.1

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